王族も通う学園で剣を抜いたのだ。普通に犯罪者として、投獄されると思われる。
「臣下でもあるが、友だった。それなのに、私のせいで……」
「……殿下」
 アレクはこの国の王太子だが、前世の自分から見るとまだ子供の部類だ。まだ心も身体も不安定で、彼を支える補佐が必要なのだろう。
 それでも、思ってしまう。
 今のアレクよりも、十歳のアルヴィンの方がしっかりとしていた。
 あのときのアルヴィンこそ、まだ保護を必要とする子供だったのに。
 でも彼は身体の苦痛も心の傷もひとりで抱え込み、さらに助けてほしいと言ったセシリアを守ろうとしてくれた。
 セシリアが彼の過去を知ったのは、アルヴィンが自力ですべて乗り越えたあとだった。
 セシリアのお陰だと彼は言ってくれたが、何もできなかったという思いが強い。
 そんなアルヴィンを傍で見てきたせいか、アレクがとても弱々しく、頼りなく見えてしまう。
 慰める言葉も出てこなかった。
 あれが、王太子ルートのイベントだったのかもしれないと気が付いたのは、彼が帰った直後のことだ。
 皆の前では完璧な王太子が、ヒロインの前では、弱さや本音を語る。