ゲームの内容を知っているが、この世界はもう、あのゲームから大きくかけ離れてしまっている。むしろこれから起こるだろう悲劇を知っているだけに、不安だけが募っていく。
 騒ぎを聞きつけた警備兵が、走り寄ってきた。
 もしかしたら誰かが通報してくれたのかもしれない。
 ダニーが拘束され、連行されていくのを見ても、安堵することはできなかった。
 彼を操っていた真犯人は、まだ学園の中にいる。そう思うと、恐ろしい。
「セシリア」
 ふと頬に、温もりを感じた。
 アルヴィンがセシリアの頬に手を掛け、心配そうに覗き込んでいた。
「すまなかった。避けるのではなく、最初から排除するべきだった」
「それは駄目よ、アルヴィン」
 さすがに襲われる前に攻撃をしたら、こちらが犯罪者になってしまう。
「だが、怖かっただろう?」
「アルヴィンがいてくれたから、平気よ。それに、彼はわたしに近寄ることもできなかったわ」
 怖かったのは、ダニーではない。
 彼の背後にいる、得体のしれない何かだ。