セシリアとしては男性の制服を着ているアルヴィンも見てみたかったが、ブランジーニ公爵家の紋章が入った騎士服が一番、彼に似合っていると思う。
 それからふたりの侍女に見送られて、部屋を出た。
 途中、数人の学生と会ったが、互いに軽く会釈をするだけで通り過ぎた。
 学園寮から校舎までは、徒歩で十分ほどの距離だ。わざわざ馬車を使う必要もない。セシリアはアルヴィンと並んで、学園までの道を歩く。
 生徒の通学のための通路は、学園や寮と同じように、部外者は入り込めないように警備されている。多くの生徒がゆったりとした速度でその通路を通り、学園に向かっていた。
 上級生たちにはすでに派閥ができているようで、親しげに挨拶を交わす者、影でこっそりと悪口を言うもの。挨拶をされたにも関わらず、無視をして通り過ぎる者など、さまざまな光景が繰り広げられていた。
(貴族社会の縮図っていうわけね。……面倒そうだわ)
 いずれセシリアたち新入生にも、こうした流れに巻き込まれていくのだろう。
 ふたりもその人の群れに加わって、学園を目指す。
(うーん、見られているなぁ……)
 周囲から、痛いほどの視線を感じる。