普通なら盛大に祝うはずの十歳の誕生日を、きれいさっぱり忘れられていたことで、中身は成人女性であるセシリアは悟った。
 父は、それほどまで自分に関心がないのだ。
 ならば誰を傍に置こうが、セシリアの勝手だ。
 まだ十歳の記憶しかなかった頃ならショックだったかもしれないが、今のセシリアにとってはむしろ好都合だった。
 さっそくアルヴィンを自分の守護騎士として屋敷に住まわせ、そのことは執事を通して報告しておいた。
 執事は、セシリアがいつのまにかひとりの少年を連れていることに驚いた様子だったが、父の了承を得たと知ると、それについて深く聞こうとはしなかった。
 アルヴィンは、ここでもかなり目立っていた。
 まだ幼い中性的な美貌は、年若い侍女たちだけではなく、一部の男性も惹きつけてしまっていることに気が付いて、なるべく自分の傍に置くことに決めた。
 守るために連れてきたのに、ここで嫌な思いをしてほしくない。
 自分の守護騎士なのだからと、セシリアの隣に彼の部屋を用意してもらい、眠るとき以外はずっと傍にいることにした。
 ひとりで食べるのは寂しいからとわがままを言い、食事のときも一緒だ。