でも離れたくなくて、会いたくて苦しくなるくらいの人はいなかった。愛しくて、切なくて、泣きたくなるような人もいなかった。
(でも、今は違う。アルヴィンと離れたくない。離れるなんて、考えたくもない。アルヴィンはわたしの大切な……)
 大切な――何だろう。
 ふたりの関係について、セシリアは初めて深く考えた。
 身内のように近しいが、兄妹のような関係ではない。友人とも違う。
 もっと近くて、離れがたい。
 魂さえも共有しているかのような、親密な間柄。
 目を閉じて、真剣に考えてみる。
 それなのに、適切な言葉がどうしても見つからない。
「……守りたいと思っているのに。今日の俺は、セシリアを泣かせてばかりだ」
 ふと、そんなアルヴィンの声が聞こえてきた。
 目を開くと、アルヴィンは困り果てたような顔をして、セシリアを見つめている。
「もう泣かないわ。だから、そんな顔をしないで」
 にこりと微笑んでみせると、アルヴィンは安堵したように手を伸ばした。髪を撫でられ、心地良さに目を細める。
「ドレスが皺になってしまうな。着替えをしたほうがいい」
「あ、そうね」