自分ばかりが救われて、苦しい。そう告げると、アルヴィンは笑う。何の憂いもない、穏やかな笑顔で。
「お前が俺に注いでくれた愛情が、失ったものすべてを補い、つらい思い出を過去のものにしてくれた。俺はもう、充分に救われている。だから何も気にすることはない」
 ふとセシリアは、前世のことを思い出す。
 自由に生きてきた。
 毎日のように大好きなゲームをして、自分で選んだ場所に住み、それなりに楽しい仕事。
 充実していたし、幸せだったと思う。
 でも、人との繋がりはあまりない人生だった。
 両親のことは好きだったが、年に数回会うだけ。先に死んでしまったのは申し訳ないし親不孝だと思うが、しっかりとした兄がいるので、そんなに心配していない。
 仲の良い友人やゲーム仲間もいる。でも、それも職場や好きなゲームが変わると、だんだん疎遠になっていく。
 恋人もいない。好きな人さえ、いなかった。
 恋をしたこともない。
 それでも楽しかった。
 とても充実していた人生だと思う。