まだ学園生活はこれからだというのに、イベントがたくさんありすぎて、思い返すと深い溜息をついてしまう。
「それにしても、王太子殿下はとにかく、あの人たちはどうして、あんなにアルヴィンを目の仇にしていたのかしら?」
 とくに、フィンは酷かった。
 ヤンデレでナルシストというだけでも現実では引き気味なのに、何とかしてアルヴィンを貶め、優位に立とうとしていた。
 許せないと憤るセシリアに、アルヴィンはまったく気にしていない様子で穏やかに言う。
「彼は、魔導師団の団長の息子にしては、魔力が少なかった。あれではBクラスどころか、Cクラス相当だ。期待に応えられなかったという重責が、彼の性格を歪めているのだろう」
 王太子であるアレクの傍に貼りついているのも、せめて側近の地位だけは得たいと言う思いからだろう。
 おそらく、彼も必死なのだ。
(ああ、そうだった。ヒロインも最初は罵られるのよね。下賤の血が混じっている者、とか言われて)
 生粋の貴族ではないのに魔力が高いヒロインを、フィンは妬ましく思い、同時に眩しいほど惹かれていた。
 もし彼が、兄と同じような悩みを抱えているのだとしたら。