さんざん怒って泣いて、疲れ果てたセシリアは、いつのまにか眠ってしまっていたようだ。目を覚まして顔を上げると、アルヴィンの整った綺麗な顔がすぐ隣にあった。
「あ……」
 どうやら彼の肩に寄り掛かって眠っていたようだ。セシリアが目を覚ましたことに気が付いたアルヴィンは、手を伸ばして、そっとセシリアの頬に触れる。
「少し目が赤くなっているな」
 痛むか、と優しく聞かれて、首を振る。
「ううん、大丈夫」
 泣き喚いて眠ってしまうなんて、まるで子供だ。
 恥ずかしくなって俯くセシリアを、アルヴィンは背後から抱きしめる。
「アルヴィン?」
 いつもとは違う、拒絶されることを恐れるような、慎重な手つき。
 何があっても、彼の手を振り払うなんてことはあり得ないのに。
 セシリアは、安心しきってアルヴィンに身を預ける。
「どうしたの?」
「……まだ、学園生活は始まってもいないのに、色々あったなと思ってな」
「たしかにそうね」
 まさかのヒロインとの遭遇に、王太子を始めとした攻略対象の来襲。