むしろアルヴィンは、まだこんなに小さいのに、誰かを守るために戦う人だ。何だか感動してしまって、胸が熱くなる。
(守ってやるなんて、初めて言われたかもしれない……)
 ようやくその言葉を引き出したのだから、彼の気が変わらないうちに屋敷に連れて行かなければ。
 そう思ったセシリアは、この場で詳しい話をするよりも、そのままアルヴィンを連れて帰ることにした。

(やっぱりね……)
 アルヴィンとの出逢いから、十日ほど経過していた。
 セシリアは自分の部屋のソファーに身体を預け、深く溜息をついた。
 前世の記憶がなかったら、セシリアもただの十歳の少女でしかない。
 周りの人間は公爵家に仕えている者ばかりで、セシリアを甘やかし、大切にしてくれる。
 だから、知らなかったのだ。
(思っていた通りだわ。お父様もお母様も、最初からわたしにあまり関心がなかったのね……)
 十歳のセシリアは両親に愛されていると信じていたし、幸せな家族だと思っていた。
 だが実際、父にとって大切なのは母だけだった。