アレクはもう側近たちを止める余裕もないようで、どうしたらいいのか考え込んでしまっている。
(王女殿下?)
そんな中。
 セシリアは、今まで兄たちの話の邪魔をしないように、静観していたミルファーの瞳を覗き込んで、息を呑んだ。
 彼女の瞳は、ぞっとするほど冷え込んでいた。
 その視線の先にいるのは、兄であるアレク。
 見てはいけないものを見てしまったような気がして、セシリアは慌てて目を逸らした。
「それに関しては、ひとつ提案が」
 アルヴィンは、ミルファーの視線に気付いていなかった。アレクに向かって、静かな声でそう告げる。
「提案?」
「はい。五年前、ブランジーニ公爵閣下が辞退したことを、私にやらせていただければと」
「五年前……。まさか、王都全体に結界を張ることができると?」
 この国の敵は、他国だけではない。
 ゲームの世界と同じように魔物が蔓延り、人々を襲っている。ゲームの中では魔法学園の生徒も、戦闘訓練のときには魔物退治に向かっていた。
(討伐のときにはお兄様とか、このダニーとか、騎士系の人々のイベントがよく起きたなぁ)
 ふと、そんなことを思い出す。