でも父とアルヴィンが魔法で契約を結んでいたなんて、セシリアにとっても初耳だ。驚いて彼を見上げるセシリアに、彼は後で詳しく話す、と小さく囁く。
「その契約の内容は?」
 アレクの問いに、アルヴィンは即答する。
「セシリア・ブランジーニが、誰からも強制されずに自分の意志で婚約者を決め、結婚するまで守護騎士として守る。そういう契約になっています」
「自分の意志……」
 戸惑ったのはアレクだけではなく、セシリアも同じだった。
 考えてみれば、王家に忠誠を示すもっとも簡単で有効な手段は、セシリアがアレクと婚約することだ。そうすれば、父は王太子の義父。アルヴィンは、王太子妃の守護騎士となる。
 ふたりを恐れ、そして必要としている国王が、それを考えないはずがない。
 もしアルヴィンが騎士団に入ることを拒めば、次に王太子とセシリアの婚約を命じるつもりだったのかもしれない。
 でも、それは父とアルヴィンの間に結ばれた魔法契約によって不可能となった。セシリアに婚約を強いれば、この国は恐ろしいほど弱体化してしまう。
 でもあの父が、セシリアを気遣ってそんな契約を決めたとは思えない。