セシリアは王太子の言葉に青ざめたが、アルヴィンはすぐにそれを退けた。
「それは不可能です。私は守護騎士になる際、公爵閣下と魔法契約を結んでいます」
「まさか、守護騎士の任命で魔法契約を?」
「はい」
 アルヴィンは騎士服の袖のボタンを外し、腕を露出させる。その白い手首には、ブランジーニ公爵家の紋章が浮かび上がっていた。
「何と……」
 アレクだけではなく、ダニーとフィン、そしてミルファーも驚きの声を上げた。
 魔法契約は、本来ならば国同士の重要な条約などの際に使用されているものだ。国王も、まさか守護騎士としての契約に用いるとは思わなかったに違いない。
 だが、魔法で契約が結ばれている以上、アルヴィンはセシリアの守護騎士を辞めることはできない。破れば、双方に甚大なダメージがあるのだ。
 いくらその存在が脅威であったとしても、父の魔力がなければこの国の防衛に多大な影響がある。
 恐ろしいが、失うわけにはいかない。
 それがこの国にとっての父であり、アルヴィンの存在であった。
 だからこそ、無理に契約を破らせることはできないのだ。