よくよく考えてみれば、嫡男である兄よりも魔力の強い妹なんて、兄からしたら邪魔者でしかない。しかも十歳だったセシリアは両親の愛を強く信じていたようだが、二十九歳の上嶋蘭からしてみると、あまり両親はセシリアに興味がなさそうだ。
「……困っているのか?」
 予想通り、アルヴィンはすぐに反応してくれた。その優しさを利用するようで心苦しいが、彼を助けるためだ。
「ええ。お兄様のことで」
 セシリアは頷いた。
「わたしとお兄様は、お母様が違うの。そのせいで、わたしのほうがお兄様よりも少しだけ魔力が強くて。だからお兄様にとって、わたしは邪魔なのよ」
 兄に疎まれているかもしれない。
 それが不安だと言うと、アルヴィンは憂い顔で頷いた。
「そうか。お前にも、敵がいるのか」
 アルヴィンはそう呟くと、決意したように頷いた。
「わかった。困っているのなら、俺が傍にいて守ってやる」
 守ると言われても頷かなかったアルヴィンは、セシリアが頼るとすぐに頷いてくれた。
 そんな彼だからこそ、守ってあげるなんて言ってはいけなかった。