自分の異性に対する免疫のなさに苦笑しながらも、セシリアは笑顔でその視線を受け止める。
「じゃあ、明日は何か作るわ。何がいい?」
「セシリアが、最初に作ってくれたあれがいい」
「……チーズリゾット? 鶏肉ときのこの?」
「ああ」
「わかった。作るね」
「楽しみにしている」
 そのあとは、ゆっくりと歩きながら他愛もない話をする。途中で酔っ払いが絡んできたが、アルヴィンは視線だけでそれを退けた。
 セシリアの守護騎士は剣技と魔力に優れ、イケメンで、しかもセシリアにだけ優しい。
 最高で、最強の守護騎士だ。
 そう思いながら、繋いだ手に少しだけ力を込める。この手が離れることは、きっとないだろう。

 いよいよ明日から授業が始まる。
 セシリアは、もう一度教科書を読み返してみたり、貴族の交友関係を復習してみたりして過ごした。
 落ち着かない様子のセシリアを、アルヴィンは傍で見守っている。
「そんなに緊張するものか?」
「……うん。今まで、他の貴族の人たちと、まったく交流していなかったから」
 普通なら親がお茶会など開催して、ふさわしい家柄の子供を招待してくれるはずだ。