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あれ?

もう、こんな時間だし、誰もいないと思っていたのに……

無人だと思っていたのに、人影が見えて、思わず入口で立ち止まった。

夕方も五時を過ぎた教室は、明かりを点けていないと薄暗い。

窓側の一番後ろの彼が、ちょうど荷物を手に取り、帰り支度をしているところだった。

何か声をかけようかと迷ったけど、思い浮かばない。

私も彼の前の自分の席へ黙って座ると、ささっと荷物を鞄に仕舞い込んだ。

いつもなら「バイバイ」と声を掛けて帰るところだけど、今日はそんな気分じゃなかった。

このまま振り返らずに、教室を出ようと心に決め、立ち上がろうとしたのだけど―――





「ねぇ、なんで泣いてるの?」





後から聞こえる声に、思わず振り返ってしまった。

彼は窓の外に広がる夕焼けの景色を眺めていた。

私のことなんか見ていなかった。

それに、私は泣いてなんかいないもの。