祖父が外出だし、祖母一人の朝食は寂しいだろうと思い、一階のダイニングへと向かった。
いつもなら、常にリビングのテレビをつけっぱなしにしているはずが、今朝は物音一つ聞こえない。
それどころか、ダイニングにも台所にも、お祖母ちゃんの姿はなかったんだ。
「お祖母ちゃん、お祖母ちゃん?」
次第に大きくなる声とともに、震える掌を堅く握り、祖母の部屋の扉を開いた。
「お祖母ちゃん、しっかりしてー!」
目の前で、苦しそうに蹲っている祖母に駆け寄った。
声を掛けても、全く反応しない。
あぁ、どうしよう。
頭が真っ白になる。
落ち着け、落ち着け―――
そう自分に言い聞かせても、震える体は抑えられない。
こういう時、体を揺すったりしちゃいけない、ってテレビで言ってなかったっけ。
いや、違うか、声を掛け続けるんだっけ。
そんなことより、救急車だよ。
自分の中で、あれやこれやと聞こえてくる声に、必死に返しながら、冷たく震える手で、制服のポケットから携帯電話を取り出した。
それからは、もうほとんど無意識だった。


