図書室の奥にある資料室のドアを開けると、埃っぽい古紙の匂いがした。

 人がひとり通れるくらいの間隔を保って、木製の本棚が並べられている資料室はまだ日が落ちる前なのに薄暗い。

 外から覗いてみる限り、そこに人の気配は全くなかった。

 やっぱり、いるはずないよね。

 噂で耳にした場所は全部探し回って、残すは図書資料室のみ。

 探し回っているうちに、うわさ話はやっぱりうわさ話に過ぎないのだとはっきりと思い知らされた。

 みんなが笑って話すあのうわさ話。

 それを、もしかしたら……と一縷の望みに縋って信じてみたあたしがバカだったのだ。

 辛い恋や叶わない恋を忘れさせてくれる『失恋の神様』

 そんなもの、本当にいるわけない。

 でもまぁ、ここまで来たから念のため。

 ドアの横にあるスイッチを触って資料室の電気をつけると、黄色っぽい明かりに照らされた資料室に一歩足を踏み入れる。

 本棚が均一の間隔で立ち並ぶ資料室はなんとなく圧迫感がある。

 本棚と本棚の間の通路はとても狭いけれど、校庭に面した窓際だけは、本棚とそれの間の通路が人がすれ違えるくらいにゆったりとしていた。

 資料室の奥に向かって窓際の通路を歩きながら、ふと足を止める。