「やっ……!」
「おい、有希。どうしたんだよ。落ち着けって」
必死に暴れてみたつもりだったけれど、両手首をきつく捕まえられたあたしは、梶谷くんの一喝とともに、背中から柔らかな布の上に押し付けられた。
まだ恐怖で手足と鼓動を震わせているあたしの目の前を、細かな埃がいくつも舞う。
窓から差し込む西日が眩しくて顔がよく見えないけれど、仰向けに倒れたあたしの上にはおそらく梶谷くんが跨っている。
何がどうなってるの。何なの、この状況……。
泣きそうになっていると、上から梶谷くんの気の抜けた声がふってきた。
「あれ? 有希じゃねーの?」
気まずそうに見下ろすくせに、まだあたしの上に乗ったままの梶谷くんに怒りを覚える。
「同じクラスの藤崎 千結衣です。何でもいいけど、早く退いて……」
震える声でそう告げると、梶谷くんが全く悪びれのない顔で笑った。



