「恵美、おまえ柔らかくてかわいいな。抱っこしていいか」


「うわーーっ!!やだっ、それ嫌だっ!!ハヤセのバカっ!なにが恵美なのっ!
じゃあわたしだって小林の下の名前を政宗(まさむね)にしよーっと!!」


「……どこからきた政宗ですか」


「伊達(だて)からきた政宗に決まってる……!!!」



有名な戦国武将だっ!!
強そうでしょ!!

ハヤセなんかよりずっとずっと格好よくて強いもんっ!!

とくにその名前しか知らないけど…!!



「政宗~、ぎゅーってしよ?わぁっ、くすぐったいっ!そこダメだってばっ!もうっ、こらっ!」


「……チッ」



えっ、今したよね……?
舌打ち……したよね…!?!?

聞き逃してないよわたし!!

わりと耳はいいんだからっ!!



「今朝のことといい、今といい、今日は少し躾が必要みたいですねエマお嬢様」


「そっ、そんなことないっ!先に煽ったのはハヤセだもん!───わぁっ!」



ぐいっと腕が引かれて、ぐらっと揺れた身体のまま寄りかかった黒いタキシードの腕の中。

ぎゅっと閉じ込めるように抱きしめられる裏庭にて。



「俺と政宗、どちらが好きですか」


「…りょ、両方、」