さらう……?
拐うって、盗賊みたいに…?
でもわたしってそんなに価値があるお宝じゃないよ…?
「エマお嬢様、俺があなたを“早瀬”にすると言った意味が伝わっていますか…?」
「っ…、」
そういうことだよね、きっと。
わたしだって何も分からない子供なんかじゃない。一応は婚約者がいたときもあったくらいだ。
危うく「早乙女 エマ」になってしまうところだったんだから。
「……つ、伝わってるよ、」
「…その上でも、うなずいてくれますか…?」
不安そうに、それでも優しく温かく見つめてくる。
コクンっと、ひとつ。
ぎゅっとハヤセのジャケットを握って、わたしなりの返事。
「───ん…っ、」
すぐに唇が塞がれる。
ハヤセの涙に合わさって、ちょっとだけしょっぱい。
「…俺が絶対に幸せにします。そのために俺だってあなたに四つ葉をあげたんですから」
「…うん…っ、ハヤセだいすき…、」
首にかかったネックレスが外からの光に反射した。
まるでこれってプロポーズだ……。
この屋敷の裏で小さな頃にあげた小さな小さな幸福は。
10年以上が経った今、とてつもなく大きなものになってわたしに返ってきた。



