「山田望生が一人でいるとことか、私見たことないわ〜、もう諦めようか」
「そうだね。うぅっ、望生君……」
顔すらも見れなかった……!
私はトボトボと体育館横にいるファンクラブをすり抜けて、靴箱に向かった。
わたしの隣には、足を踏んだ形跡のある“山田”と書いた上靴がある。
望生くんの上靴を横目で見ながら、“sayu”と書いた赤い上靴を取った。
上靴をパンッと床に投げて履こうとしたけど、変な方向に飛んでしまった。
「うぉ、上靴!? 痛っ」
………あ。
上靴が飛んでいったのは、私のよく知る人の頭だった。
飛ばしすぎでしょ……私……!!
「おーい、彩結ー!」
「そんな大きな声出さなくても聞こえるよ!!」
こいつ、声が高いから耳がキーンとするっ!
私は眉間にシワを寄せて、耳をふさいで相手を睨んだ。