「ほら、おいで」



離れていても、なにかの記憶に触れるたび思い出す。

教科書を開いたとき。


_『…りつか、次あてられるだろ…答え分かんのか』

『ぜんっぜん分からんっ』



廊下を歩いているとき。



_『わっ…!』

『……っ…!!?』

『…くふふっ…織、びっくりした?』

『……?…うん』

『やったー』

『はぁ……なにが楽しいんだか』

『びっくりした織はレアだから』

『……レアキャラ』

『そ、レアキャラ!』



ふとしたときに思い出して、会いたくなる。

もうそばにいないのに、立夏の声が、笑顔が、手が、まるでそこにあるかのように頭に浮かぶ。


俺のそばにいてほしい。

どこにもいかないでほしい。

自分から離れていったくせに。

こっちに…


__ほら、おいで


今はこんなにそばにいるのに、近くにいるのに、触れられる距離にいるのに、素直に喜べなかった。


もう…いい、もういいのか、…俺は……




立夏のそばにいて、いいんですか…?




「あっははははっ…、織くん、私に告白してどうすんのよ」

「帰るときに連絡してくれたらいいから、ふたりでイルミネーションでも見に行っちゃったら?うふふ…ラブラブな話、また今度会ったときに聞かせてね?」




「織くん、……ありがとうね」



プツリ、と電話の切れる音がした。