部屋の中にはメガネをかけ白い服をきた、

白髪まじりのおじさんが座っていました。

「こんにちは」と笑顔で言ってくれました。

けいも、少しだけ頭を下げました。


それから、おじさんとお母さんはたくさん話をしてました。

だけど、けいには難しくて言葉の意味がわかりません。

お母さんはおじさんのことを『先生』と呼んでました。

けいは、幼稚園の先生とは全然、違うなーって思いました。

難しい言葉ばかりで、わからなかったけど

二人とも怖そうな顔でずっと話してました。


そして、最後に先生が言いました。

「これから、入院してください」

にゅういんって?

けいには、もちろん意味がわかりません。

でも、お母さんが悲しそうな顔をしてたので、きっとこれはいやなことなんだ…

そう思ったとたん、ずっと我慢していた涙があふれはじめました。

「けいは、男の子でしょ? 泣かないの」

お母さんが優しい声で言いました。

お母さんもきっと泣きたいんだ。

ぼくも、がまんしなくちゃいけない…

けいは頑張って、少しずつ涙を止めました。


それから…

ふたりで病院の中にあるお店にいきました。

そこはコンビニみたいに何でもそろっていました。

お母さんは、はみがきとか、パジャマとか、スリッパとか、

下着とか、タオルとか…いろんなものを買っていました。

ぜんぶ家にあるのに、なんでそんなにたくさん買っているのか、

けいには不思議でした。


買い物が終わって、やっと家に帰れると思ったら…

お母さんはまた、さっきの部屋に戻りました。

今度は、先生でなくナースさんが待っていました。

ナースさんは、ふたりを別の部屋に連れて行きました。

「じゃ、ここですからね」

見ると、四つの小さなベッドが並んでいました。

けいとお母さんはいちばん奥にある、窓ぎわのベッドに連れて行かれます。

他のベッドでは、けいと同じくらいの子供たちが横になって、静かに寝ていました。