バスを降りると目の前に大きな建物がありました。

「お母さん。あれ、なに?」

「あれは病院っていうのよ」

それは、とっても大きな病院でけいにはまるでお城のように見えました。


病院に入ると、なかには、たくさんのひとでいっぱいでした。

大人も子供も、おじいいちゃんや、おばあちゃんくらいの人たちもいます。

けいや、お母さんのように普通の格好のひとたちにまじって…

まだ昼間なのに、もうパジャマを着て歩いてるひとたちがいました。

けいにはそれが不思議で、じーっと見ました。

それから、上から下までぜんぶ真っ白な服を着て、

ニコニコと笑っているひとたちがいました。

けいには、そのひとたちがお母さんみたいにとても優しそうに見えました。

「あのひと、だれ?」

「あれは、ナースさんって言うの」

そう優しく教えてくれたあと、

お母さんはナースさんのところにいって話はじめました。


しばらくして、お母さんが戻ってきました。

お母さんは、けいをトイレにつれて行きました。

お母さんは紙コップを出して、

「けい、ここにおしっこして」と少し悲しい顔で言いました。

なんで?

とけいは心のなかで、思いながらも素直にそこにおしっこをしました。


紙コップは、赤いおしっこでいっぱいでした。

お母さんは、それを見て驚きました。

なんで?

けいはまたそう思いました。

けいのおしっこは最近、ずっと真っ赤でした。

だから、いつも通りなのに…

お母さんが紙コップをナースさんに渡すと、

「けいくん、こっちにきてっ」

ナースさんがそう言いました。

お母さんは2回、うんうんって優しく頷いて、ついていくように手を振ります。


でも…

けいは、ほんとはいきたくありませんでした。

なんだか、むこうに怖いものが待っている、

そう感じていたのです。