夜が明けぬなら、いっそ。





「箸の持ち方、姿勢、手の添え方、なってないよ小雪」


「……」



常陸国へ向かう途中に数日間滞在していた小屋へ戻った私と景秀。

一応はここが今の私達の拠点らしく。


そして20日後に備えた教育が数日前から始まっていた。



「あと常に正座。胡座(あぐら)は男がすることだ」


「私は昔から父さんにそう教わってきた」


「なら今日、それ全部忘れて」


「無理に決まってる。それに、まだ本当にやるだなんて言ってない」



屁理屈いうなよ、と落とした景秀。


どっちがだ。

あんな場面で半ば強引にされたのは私の方だろう。

なんでお前がそんなに強気なんだ。



「それから徳川の人間は何か人より秀でている者を好む傾向があるんだ」


「…嫌な傾向だな」


「だから得意なことを披露させられるだろうね」


「心臓を一突きで一瞬だ。私の瞬発力はきっとお前よりすごい」



淡い撫子色をした着物、水仙が描かれた帯。

そんな身なりの女から予想もせぬ危ない言葉が飛び出したことで、唖然とする目の前の男。



「……そうではない。君は女の子だ」


「逆に良いだろう。お前が選ぶ女なんだ、それくらい勇ましい方が景秀らしい嫁だと思うが」