「……ふざけてるのか?それとも私を馬鹿にしているのか?どちらにせよ斬るぞ」
「俺は至って正気だよ」
「まず時と場所を把握しろ。どこが正気の沙汰に見えるんだ」
こんな密輸場で、私は父さんの仇を探すためにわざわざ変装してまで来て。
ここにきて初めて戸ノ内 彦五郎の知らなかった過去に片足を浸かりつつあって。
そしたらこいつからは夫婦だと……?
ふざけすぎるにも程というものがあるだろう。
「お願いだ小雪、でなければ俺は20も年上の年増な女を嫁に貰う羽目になる。
それも……かなりの醜女(しこめ)だと」
「おめでとう」
「……上から持ち上がった縁談でね。もし俺に将来を交わした女がいるなら考える、だがその際は会わせろと言われているんだ」
「そんなもの知るか。花街の女にでも頼めばいいだろ」
「そしたら相手は本気になるから厄介なんだよ」
なんだそれ。
だけどそいつからは“時間がない”なんて言葉すら聞こえるようだった。
時間がないのはお前じゃなく、どう考えても───…私だ。
「…いつなんだ、それは」
「20日後だ」
「…その日だけ“ふり”をすればいいってことか?」
「…まぁ、…そうなるかな」
「……考えておく」
小雪!!と、海風の中でおもいっきり抱き締められた───。



