夜が明けぬなら、いっそ。

景秀side




「…別々の部屋は無いのか」


「すみません…今日はたまたま混み合っておりまして…」


「ならせめて別々の布団は」


「ほら、この寒さでしょう…?布団を洗っても乾かなくて…。もちろん湯で温まってもらえるかと…!」



はぁ、と。

ため息を吐いて額を押さえたのは小雪。



「まぁまぁいいじゃないか。部屋があるだけ十分だよ」



と、宥めたのは俺。


通された一室、敷かれた布団は1枚。

もしここが花街だったとすれば、そんな光景に男女が行うものといえば1つだけ。



「私は畳で寝る」


「そんなの駄目に決まってる」


「なら私が布団を使うから、お前は畳で寝ろ」


「いやいや寒いよそれは」



私は寒くない、なんて。

そんな攻防戦をここまで繰り広げる理由は見て分かる通りだ。


なんとか宿へたどり着いたはいいものの、部屋は1つ。

でもそれまでは良かった。

1枚の布団に2つの枕が並べられている光景こそ、年頃の少女からすれば複雑らしく。



「一緒でいいよ俺は。壬生狼に捕まった時だって2人で身体を温め合っただろ?」


「……変な言い方するな。あの時は蔵でよく見えなかったし、私も寝ぼけていた」


「なら暗くすれば問題ない」