「そうだねぇ、まぁ俺に任せて。なんとか上手くやってみせるさ。でも小雪、」
「なんだ」
「出来るだけ俺に話を合わせてくれ。あと、絶対に女の子だとは見破られないように」
「…そのつもりだ」
壬生浪士組…。
私は聞いたことも無かったが、京の町では何かと有名らしい。
なんでも、武士ではない男達が剣の腕だけでかき集められた組織だという。
案外考えもしないところに手がかりは落ちているものだ。
もしかすると、父さんを殺した男の何かを掴めるかもしれない。
「さぁ寝ようか。明日はきっと大変なことになる」
「…誰のせいだ」
「え、俺かい?いやいや芹沢 鴨って男のせいにしておいてよ、そこは」
人斬りには心は無いものとばかり思っていた。
そういった情は捨てるものだと、小さい頃から教わってきた。
だから人斬りには普通の人間にある体温は無いものなんだと。
けれど、それは違ったらしい。
「小雪、寝れそう?」
「…あぁ、寝る」
「そうか。よかった」
こんなにも、あたたかいとは。
人を殺したばかりの腕の中だというのに、男の腕は温かかった───。



