景秀side




朝がやって来たときにはもう、跡形もなく少女は居なくなっていて。

自分で冷たく突き放しておいたくせ、焦りながらも城中を探して。


それでも雪のように溶けていったのだと。



「で、俺を狙ってる輩って?」


「主に宇都宮藩と小田原藩です」


「わりと主要じゃないか。万屋で名が上がり過ぎてしまったかな」


「…ええ、左様かと」



こうしてたまたま通りかかった廊下で話したとしても、誰も気にすることはない。

屋根裏と通じる会話の先には俺の手下である忍が1人。


どうやら俺は狙われてしまったらしく。


暗殺者にはそんなものは付き物、しかしもう1人の暗殺者が今まで犯した罪も背負ったとなれば、さすがに名は上がってしまう。

それくらい危ない組織に手を出していたらしい、あの女の子はたった1人で。



「…まぁ今日から片っ端から殺していくに限るね。手間はかけさせないつもりだけど援護は任せた」


「はっ」



小雪が小雪で良かった。

わがままを全然言わない子で不器用でぶっきらぼうだから、俺があんなに冷たく放っても取り乱しはしなかった。