こいつが居なければ、あんなにも綺麗な着物を着たって意味がない。


それを誰に見せればいいと言うんだ。
あれはかなりの代物だ。

買った本人が傍にいてこそ、私だって気持ちよく袖が通せられる。



「…わかった。でもそれまでも女の子として生きてくれよ」


「…出来る限りは」


「刀なんか捨てて、もう2度と握る必要だってない」


「…そしたら…会いに来てくれるのか」



いつ消えてしまうか分からないぞ。

次の冬には、既に雪となって降り注いでいるかもしれない。


まぁそれもそれで風情があっていいか…。



「景秀、」



不安になって、見上げるように訴えた。


私はいつからこんなに弱くなったんだ。

いつから、こんなふうに甘えることが出来るようになったんだ。



「ん…、」



弾けることなく、長く短く合わさった。

濡れているのは水か涙か。
その探りすら、私達はしてはいけない。



「小雪、雪が降る夜は…俺達にとって何よりも特別なんだ」



だからずっと覚えていてくれ───…。


それは私の台詞だと。

どうせ夜が隠してくれるだろうと、私は今まで誰にも見せたことない無邪気な顔で笑いかけた。