夜が明けぬなら、いっそ。





最後くらい探ったって許される。

本当は私だってたくさん聞きたいことも話したいこともあったんだ。


だけど私の人生は雪と同じだから、そんなゆっくり温め合っている暇はない。



「…まだ、お前を感じていたいんだよ」


「………変態くさいな」


「うるさいな」



くすっと、お互いに吹き出してしまった。


徳川 景秀はこんな男なのだと。

ズルくて、強くて、よく分からなくて、不器用で下手くそで、格段に優しい男だ。



「…こんな身体じゃ、抱き心地も悪いだろ」


「そんなことない。お前はあったかいよ」


「…お前も、…あったかい」



もう少し、もう少し夜は明けてくれるな。

出来ればずっとこのままがいい。



「小雪、お前は女の子だ。かわいい…女の子だよ」



何度も何度も名前を呼ばれる。

その度に胸がきゅうっと締め付けられるくらいに苦しいのに、愛しい。



「小雪、」


「…なんだ」


「俺がお前にあげた着物と帯、持って行ってくれないか」



もう女として生きろ、ということなのだろう。

残された人生、少しでも幸せにと。



「…いらない」


「振られてしまったね、俺は」


「…お前が……いつか、渡しに来い。そしたら着てやる」