夜が明けぬなら、いっそ。





最後、男の叫び声すら聞かせてはもらえなかった。

首ではなく、まずは胸を一突き。
そして胴体、足、最後は首。

それはもう木端微塵だった。


やっぱり私には到底敵いそうにない暗殺者が目の前にいた。

それを地面に倒れ込みながらも見ることしか。



「…身体、洗おう。近くに小さな池があった」


「……自分で、やれる」


「よっと、」



私の返事はどうでもいいらしい。

スッと抱き上げられて、奥へ進んでゆく。



「大丈夫だ、…今は落ち着いてる」


「暗くて見えない。だから平気だろ小雪」



月の光だけだ。

今日は半月。

木々の隙間から覗いた光は、高く高く届きそうにないくらい澄んでいる。



「あんなに…池で水浴びはやめろと言ってただろ、」



返事なく池の前の石の上に座らせられて、纏っていた着物が徐々に下ろされてゆく。

はらっと落ちたとき、覗いたサラシ。



「…やっぱり細いな、」


「……もうすぐ、死ぬからな」


「言うな。本気で怒るよ小雪」



もう怒ってるだろ。

全然言葉を返してくれなければ、私の言うことなんか聞いてくれない。