夜が明けぬなら、いっそ。





どうしてこいつは、こうも簡単に人の心の内とやらに平気で入ってくるんだろう。

何故そんなことが出来てしまうのか。


それはきっと、私がそうさせることを許してしまっているからだ。

今だって殺気すら出さず受け入れ、それすらも心地いいと感じてしまっているのも私なのだから。



「…小雪、この城に入ったとき…なにか感じた?」


「……なにかって、なんだ」


「なんでもいいんだ。例えば、久しぶり…みたいな感覚とか」



久しぶりって、私は今日はじめて江戸城に来たというのに。

なにを言っているんだこいつは。



「……懐かしい、とは思ったな」


「…懐かしい?」


「あぁ。初めて来た感覚がしなかったのは確かだ」



でもそういう感覚は、わりと色んな場所に落ちているような気がする。

前も来たことがあるような感じがする…なんて、例えば前世だったり魂が吸い寄せられているとか。


そういった類いの話はあまり信じてはいないとしても、そう感じたのは本当だ。



「…そう」



それだけ囁いて、ぎゅっと腕に力を込めた景秀。