夜が明けぬなら、いっそ。





「ここが小雪が自由に寝泊まりしていい部屋。俺の自室もすぐ近くにあるから、なにかあったら来るといい」


「……広すぎる。この4分の1の部屋はないのか」


「それだと物置小屋になってしまうよ。だったら俺と同室にする?」


「……ここでいい」



あら残念、と。

そいつはいつもの調子で笑って、城内を案内してくれる。



「それにしても一時はどうなることかと思ったよ」



やはり私の読みは当たっていた。

呑気な顔をしてケラケラ笑っている景秀。



「あれって、その場しのぎの言葉?それとも本当のこと?」


「……なんのことだ」


「ほら、道端に咲いてる花が~って言ってただろ?」


「忘れたな」



ふいっと顔を逸らせば、そんなものを追いかけてくるように覗き込んでこようとする。

だからぐいっと無理矢理にも引き剥がす。


けれど、そんなもの気にもせずに腕に引き寄せてしまうのが徳川 景秀という男だ。



「ありがとう小雪。おかげで助かったし、なんていうか色々と驚かされたよ」


「…別に私は任務をこなしただけだ」


「だとしてもだ。…お前に頼んで正解だった」