夜が明けぬなら、いっそ。





一時はどうなることかと思ったよ───。

後日談を想像するなら、きっとそいつは呑気にそう言っているだろう。


役目があること、そのために刀を持って人探しをしていること、全てを隠さず話した。



「その探し人とやらの宛てはあるのか?余に出来ることなら手伝うぞ」


「…着々と解決しつつあります。ですので、そのお言葉だけで十分です」


「そうか。なにかあったらいつでも言ってくれていい」



そんなお言葉に甘えることにして、当分の間は江戸の町を見て回りたいと。

その間だけでも拠点を城に置かせてもらえることになった。


江戸は一番に栄えている町だと言うし、暗殺任務以外でのんびりしたことは無かったから。

仲良くなってしまった私達を前に、景秀も困ったように微笑んだ。



「ではお礼として、上様に何か危険がありましたら率先してお守り致します」


「ははっ、それは頼もしいな」


「家茂くん、……惚れたら駄目だよ」


「景秀よ、そういう男は嫌われてしまうぞ」



彼に父さんの名前を出せば、確実に暗殺者の名前は分かったはずなのに。

あえて言わなかったのは、この私だった───。