「…私はこいつと将来を約束した者ではありません」
「……どういうことだ?」
「───これが私の本来の姿です」
バサッと淡い着物を脱いだ。
既に中に着ていたこともあって、早着替えは成功。
袴でもなく忍装束でもなく、全てを組み合わせて特注で調整した、一番暗殺に向いている身なり。
そして脇には1つの刀。
「得意なことも歌ではありません。…景秀とは旅の途中で出会いました」
「小雪、お前…、」
「上様に対して嘘は良くない。…文句ならあとで聞く」
戸惑う景秀へ、それでも曲げない信念を見せた。
やれやれと。
そいつは軽い息を吐く。
「…ごめん家茂くん、そういうことだ。騙すような真似をして申し訳ございません」
諦めたそいつも一緒になって頭を下げる。
きょとんと見つめてくる将軍様に家臣達。
……と、吹き出すような笑い声が広がった。
「はっはっは!お主らは余をどれだけ笑い殺すつもりのだ!
気に入った。しばらく城に住んで良いぞ」
「……は?」
「嫁にも紹介しておきたい。まさかこんな勇ましい娘がこの世に居るなんて、景秀が連れて来るだけある」



