夜が明けぬなら、いっそ。





「…何故ついて来る」


「たまたま道が同じなだけさ。自意識過剰だねぇ小雪。あぁ間違えた、トキ“ちゃん”?」



嫌いだ、こいつは。

女だと知った途端にからかってくる。
そういうつもりで言ったのではないというのに。


歳を聞けば20は越えているという。

大人げないと言ってしまえば、私が子供なんだと馬鹿にされそうだからやめた。



「てか小雪、もう10日は歩いてる。さすがに宿をとろう。若い女の子が野宿だなんて見てられないよ俺」



“小雪”と呼んだり“トキ”と呼んだり、その一貫性がない呼び方はどうにかならないのか。



「平気だ。わざわざ寝るだけに金を払うなんて勿体ない」


「いやいや、湯を浴びたりしたいだろ?」


「そこらの池で十分だ」


「阿保、それは湯じゃなく水って言うんだ。それに君は女の子だよ」



「だからなんだ」と、ぶっきらぼうに放つ。



「……ええ、正気?」



余計になにか思うところがあったのか、景秀は足早に追いかけてきた。

江戸から京へ、己の足だけを信じて向かっていた今日。