なにが安心だ。
お前と同じで安心することなんか1つもない。
「…花街に入り浸ってる分際で何を言ってるんだ」
「それが本当なんだよ。俺はわりと潔癖症でね。
快楽のために身体を合わせるなら未だしも、人と唇を合わせるだなんて考えただけでも最悪だ」
「……してるじゃないか今。最悪だろ」
「それくらい抑えが効かなかった」
最高だったね───と、してやったと言わんばかりの腹立つ笑み。
怒る気力すら無い。
こんな血だらけの接吻が私達の初めてだなんて、それはまた随分と納得のいく味だとも。
「…小雪、触りたくない相手にわざわざ接吻をしてやるほど俺が優しいと思う?」
「思わない」
「……だろ。少しグサッと来るけれどね、その即答は」
覆い被さられて背中には腕が回されたまま。
ふっと微笑むだけで息がかかってしまう距離の中、いつの間にか吐血も咳も止まっていた。
「…ずっとそれ、着たら?」
私の着物を見つめていた。
これは景秀が買ってくれたものだから、必要なくなったら返すつもりだった。
「…私には似合わない。こんな淡い色は」
「じゃあ暗い色なら着てくれるのかい?」
「…そういう問題でもない。私は人斬りなんだ、似合うものは刀と血だけだ」
「そんなことはない。似合うと思ったから俺は必死に選んできたんだよ」



