夜が明けぬなら、いっそ。





ただ者ではない、こいつは。

こんな話を楽しげに話せてしまう人間はとうに狂っている証だ。


私の名前を知っていたのだってそうなんじゃないかと、疑っていないことは無かった。



「わかった、いいよ」



袴から着物を出し、右腹の紐を解いてゆく。

シュルッと解いて、同じように内側も。


その隙間から覗いた筋肉は艶々しく、この男は着痩せをする類いの人間だったのかと。

ただそれだけで刀を幾年握って来たのかを分かってしまう自分のような女は、世界中探しても1人だけなんだろう。



「そんなに見られると照れるな。一応は女の子の前で脱いでるわけだからね、俺」



女は脱がせたいってのに───と、軽く笑いながら肩から着物が落ちた。


そんなとき。

「あ、やっぱ無し」と、男は着物を身体に戻してしまった。



「…なぜだ。逆に信憑性が上がるぞ」


「だって想像以上に寒いんだもの。外は雪、今は冬。そこで半裸になるのは中々に勇気がいるんだよ」



素早い動作で着物を直して座ると、燗酒をお猪口に手酌。

そして何事も無かったかのように私に微笑みかけてくる。