夜が明けぬなら、いっそ。





「小雪は意外と料理、得意なの?」


「…うん。父さんが居なくなってから1人で生きていたから」


「…そっか。俺も同じだよ」



だから大丈夫、と。

そう言われなくても寂しくない雰囲気が伝えてくる。



「味はどう?」


「うーん、…ちょっと薄いかな」


「あ、ほんと?じゃあ醤油と塩を少し足そうか」


「私がやる。景秀、ちょっと雑なところがあるよ」



男はそんな私をじっと見つめて、ははっと笑った釜戸の前。

こうして他のことに気を取られていると口調は自然と気にならなくなった。

それもこいつの策なのだろう。


醤油と塩を適量に追加していると、噛み締めるように景秀はつぶやいた。



「料理上手でしっかり者、ってのも追加かな」


「……それなりに美人も入れておけ」


「あ、ちょっと戻ってるから小雪。当日まで男口調は無しだろう?」


「…ごめんね」



20も年上、それに醜女だと。

どうして景秀の縁談相手がそうなってしまったのかが気になったが、当日はその女も来るらしい。


きっと私と違って身分も位も高いお嬢様なんだろう。