山田は早く結婚したかった。自分だけのものにしたかった。
山田は、今日子と旅行に行ったり、水族館に行ったり、今日子の喜ぶことを必死に頑張った。
「今日子さん、早く結婚したい。御実家にご挨拶に行きたい。」
「実家ね・・・、あなたの実家はどうなの? こんな年上の女を連れて言ったらそれこそ大変じゃないの? 」
「・・・僕ね、両親誰だか知らないの。赤ん坊の時に施設の前に捨てられた。だから施設で育ったんだ。挨拶するとしたらその施設の優しいおかあさんかな。山田 樹という名前は僕が捨てられた時に一緒にメモが入っていたんだって。」
今日子は驚いた。ただ、山田が年上を好きな理由がわかった気がした。
「そう・・・。驚いた。今まで何も言わないから・・・」
「何だか言いたくなかった。マザコンみたいに思われてもイャだから。僕、親がいないことでかわいそうと思われたり、特別扱いされたり、差別されたりするのがイャだから勉強をとにかく頑張った。京都にある国立大学を出た。学校は奨学金で行って、奨学金の返済も既に終わったよ。」
「そう・・・苦労したのね。ホント驚いた。そんなに苦労しているように見えなかったし、全く思いもしなかった。えらいね、山田君・・・。うちの親の挨拶に関しては少し時間を頂戴。まずは私が話します。」