私はベッドから身を起こして、その端に腰かけると、枕元に飾ってある写真を手に取る。春の京都で撮ったツーショット。写真の中の私たちは、本当に幸せそうに寄り添って、微笑んでいる。まさかその半年後に、永遠の別れを迎えるなんて、神ならぬ身、知る由もなかったし。想像することも出来なかった。
「学・・・。」
思わず彼の名を呼ぶ。呼んでも、応えてくれることはない。そんなことは、わかり切っているのに・・・。
「不躾にこんなことお聞きして、失礼だとは思いますけど、瞳さんは今、幸せですか?」
今日、帰り道で一緒になった後輩から、突然こんなことを聞かれた。
「不幸な事故で旦那さんを失って、もう2度と会えない。そんな生活がこれから何十年と続くんですよ。正直辛くないですか?」
急にそんなことを聞かれると思ってなかったから、その問いに、一瞬戸惑った私は
「幸せ、か・・・。」
その言葉を繰り返した後
「幸せかと聞かれれば、幸せだと思う。だけど、その幸せの形が、思い描いていたものとかなり違ってしまってるのは確かだよね。」
そう答えた。
「それに一人だったら、考えることもいろいろあったかもしれないけど、私には子供がいるから。夫の分身である子供を立派に育てることしか、今は考えてないかな。」
更にそう続けた私の答えは、いささか優等生過ぎただろうか?
学がいない。この事実は取り返しのつかない喪失感を私に与えたまま、今も決して埋まることはない。間違いなく一生このまま。だって学の代わりなんて、世界中のどこを探したって見つからないんだから。
学のぬくもりが恋しくないはずはない。学をもう1度抱きしめたい、抱きしめられたい。彼の香りに包まれて、彼の腕の中でもう1度眠りたい、そう思わない日なんて1日たりともない。
学に『嘘つき!』って言いたい。本当に寂しい。でも、だからと言って、彼と出会ったこと、彼と結婚したことを後悔したことなんかない。本当に1度もない。学を大好きになった自分を褒めてやりたいとすら思う。
私と学はケンカして、今も仲直り出来ないまま。そのことをずっと後悔してる。だからいつの日か、何十年か先に、私が彼のところにいった時、彼は30歳のままで、私はお婆さんになっちゃってて・・・ひょっとしたら学は私のことが、もうわからないかもしれない。
でも・・・私は信じている。私の姿かたちがどんなに変わっていても、学は必ず私を見つけてくれる。『待ってたよ』そう言って抱きしめてくれるって。だから私も彼を抱き返して、こう言うんだ。
『学、あの時はごめんなさい。そして長い間、待たせて本当にごめんね。でもこれからはもうずっと一緒だよ。』
って。だからその日が来るまで、私は学の妻として、彼の忘れ形見の倫と一緒に、胸を張って、彼の分まで精一杯生きて行く。
「学、私はあなたを愛しています。私のこの気持ちはいつまでも、絶対に変わらないから。だから待っててね。」
私は写真の夫に語り掛ける。その言葉に、天国の学が本当に嬉しそうに頷いてくれたのが、はっきりと私にはわかった。
END
「学・・・。」
思わず彼の名を呼ぶ。呼んでも、応えてくれることはない。そんなことは、わかり切っているのに・・・。
「不躾にこんなことお聞きして、失礼だとは思いますけど、瞳さんは今、幸せですか?」
今日、帰り道で一緒になった後輩から、突然こんなことを聞かれた。
「不幸な事故で旦那さんを失って、もう2度と会えない。そんな生活がこれから何十年と続くんですよ。正直辛くないですか?」
急にそんなことを聞かれると思ってなかったから、その問いに、一瞬戸惑った私は
「幸せ、か・・・。」
その言葉を繰り返した後
「幸せかと聞かれれば、幸せだと思う。だけど、その幸せの形が、思い描いていたものとかなり違ってしまってるのは確かだよね。」
そう答えた。
「それに一人だったら、考えることもいろいろあったかもしれないけど、私には子供がいるから。夫の分身である子供を立派に育てることしか、今は考えてないかな。」
更にそう続けた私の答えは、いささか優等生過ぎただろうか?
学がいない。この事実は取り返しのつかない喪失感を私に与えたまま、今も決して埋まることはない。間違いなく一生このまま。だって学の代わりなんて、世界中のどこを探したって見つからないんだから。
学のぬくもりが恋しくないはずはない。学をもう1度抱きしめたい、抱きしめられたい。彼の香りに包まれて、彼の腕の中でもう1度眠りたい、そう思わない日なんて1日たりともない。
学に『嘘つき!』って言いたい。本当に寂しい。でも、だからと言って、彼と出会ったこと、彼と結婚したことを後悔したことなんかない。本当に1度もない。学を大好きになった自分を褒めてやりたいとすら思う。
私と学はケンカして、今も仲直り出来ないまま。そのことをずっと後悔してる。だからいつの日か、何十年か先に、私が彼のところにいった時、彼は30歳のままで、私はお婆さんになっちゃってて・・・ひょっとしたら学は私のことが、もうわからないかもしれない。
でも・・・私は信じている。私の姿かたちがどんなに変わっていても、学は必ず私を見つけてくれる。『待ってたよ』そう言って抱きしめてくれるって。だから私も彼を抱き返して、こう言うんだ。
『学、あの時はごめんなさい。そして長い間、待たせて本当にごめんね。でもこれからはもうずっと一緒だよ。』
って。だからその日が来るまで、私は学の妻として、彼の忘れ形見の倫と一緒に、胸を張って、彼の分まで精一杯生きて行く。
「学、私はあなたを愛しています。私のこの気持ちはいつまでも、絶対に変わらないから。だから待っててね。」
私は写真の夫に語り掛ける。その言葉に、天国の学が本当に嬉しそうに頷いてくれたのが、はっきりと私にはわかった。
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