あなたを愛しています

先生がドアの向こうに消えたのを見届けると


「お姉ちゃん・・・。」


複雑そうな表情を浮かべて、妹が私に声を掛ける。


「なに、その顔?おめでたいことなんだから、ちゃんと祝福してよ。」


私はそう言うと


「それはそうだけど、でも・・・。」


妹はやっぱり困惑気味だ。


「まぁ、正直私も驚いてはいる。でも・・・素直に嬉しいよ。」


そう言い切った私の顔を、ハッとしたように見る妹。


「だって、とうとう来てくれたんだよ。学と私の赤ちゃんが。この5年間、どんなに待ち望んだことか。」


「それはそうかもしれないけど・・・でも現実にお義兄さんはもういないんだよ。お姉ちゃんはこれから、1人でお腹の子を育てて行かなきゃいけないんだよ。」


妹が心配するのも、無理はないこと。でも私は覚悟を決めている。


「確かに簡単なことじゃない、それはわかってる。でもね、この子を産まないなんて選択肢は、私の中では絶対にありえないから。」


そう言い切った私は、妹に微笑む。


「お姉ちゃん・・・。」


その視線を受け止めた妹は、やがて大きく1つ頷くと


「わかった、私も応援するよ。」


笑顔を返してくれる。


「咲、ありがとう。」


そんな妹の言葉が嬉しかった。でも・・・


「詩織さんにご迷惑を掛けてしまうことになっちゃったのが、心苦しいな。」


私はそれだけが引っ掛かっていた。


「どういうこと?」


「だって、せっかく呼び戻していただいたのに、入社3週目にして、妊娠が発覚して・・・初めてのことで、まだよくわからないけど、これから悪阻が酷くなって、またお休みさせていただくことも出て来ると思うし、下手したらほとんど戦力にならないまま、産休、育休に突入ってことになりかねない。」


「じゃ仕事は・・・?」


「辞めるしかないと思う。じゃないと、会社に迷惑を掛けるだけじゃなくて、私を推薦して下さった詩織さんの立場も悪くなってしまう。」


「そっか、そうかもしれないね・・・。」


私の言葉に、妹が仕方ないといった表情で頷いた、次の瞬間


「2人して、なにバカなこと言ってるの?」


という言葉と共に、ガチャッと病室のドアが開いた。