あなたを愛しています

こうして私は、夫と5年間、共に過ごした部屋を出て、実家に引っ越すことになった。その結果、自分の荷物だけでなく、否が応でも遺品整理をする必要性に迫られ、義母がやって来た。


彼がついこの間まで使っていた品々を処分することは、身を切られるくらいに辛かったが、義母と思い出を語りながら、時に涙を流しながら、進めて行った。


形見分けも終わり、帰り間際、ふと私を振り返った義母は


「瞳さん、いろいろとありがとう。」


そう言って、私に頭を下げた。


「いえ、私の方こそ、ふつつかな嫁で。お義母さんにご迷惑ばかりを・・・。」


そんなことを言われるとは思わず、とっさにそんな言葉を口走ると


「ふつつかどころか、学にはもったいないくらいのいいお嫁さんだったわ。」


義母はそう言って、微笑した。でもすぐに表情を改めると


「あなたの為を思うなら、学のことは早く忘れて、新たな人生を歩んで欲しいって言うべきなんでしょうね。」


と寂しそうに言い出した。


「お義母さん・・・。」


この言葉に胸をつかれる。


「それでも私はあなたにお願いしたい。例え、あなたがこれからどんな道を歩むにしても、心の奥底で構わないから・・・学のことを忘れないであげて。お願いします。」


そう言って私に頭を下げる義母。


「はい、お約束します。」


そう答えた私に


「ありがとう。」


目に涙が浮かべながら、義母はまた頭を下げた。


そしていよいよ当日。業者さんの手で、何にも無くなくなった部屋。


(この部屋、こんなに広かったんだ。2人で住むには贅沢だったな・・・。)


今更ながら、そんなことを思う。


「学、いよいよこのお部屋ともお別れだよ。学、今日まで、本当にありがとう。私は5年間、幸せでした。私はこれで、一回実家に帰ります。もちろん、学も一緒に。マスオさん状態で、居心地悪いかもしれないけど、少しの間、辛抱してね。じゃ、学、これからもずっと一緒によろしくお願いします!」


そう言って、左手薬指に目をやった私は、1つ頷くと、部屋を出た。