あなたを愛しています

「そっか・・・なんか凄い話だね。」


「だから私たちが来た時、お姉ちゃん泣いてたんだ。」


「それは、泣けて来るよね。」


「嬉しかったけど・・・やっぱり悲しかったです・・・。」


さっきまでとは一転、しんみりとした雰囲気になってしまい、座は沈黙に包まれる。


「ねぇ、瞳。」


少しして、その沈黙を破って、詩織さんが声を掛けて来る。


「話は変わるけど、あんた就職活動苦戦してるんだって?」


「はい。やっばり5年も専業主婦してると、どこの会社もなかなか相手にしてくれなくて・・・。」


私は正直に答える。


「そっか・・・。」


私の返事に、詩織さんはひとつ頷くと


「あんた、ウチの会社に戻って来る気ない?」


真剣な表情で、聞いて来た。


「えっ?」


思わぬ言葉に、私が驚いていると


「今日、ここに来たのは、あんたを励ます意味もあったけど、この話をしようと思ったからなんだよ。」


そう言って、詩織さんは真っすぐに私を見る。ふと横を見ると、妹も驚いたような顔をしている。どうやらこの子も何も聞いてなかったらしい。


「あんたが結婚を機に、退職するって聞いた時、正直もったいないなと思った。でもあんたの意思は固かったし、そういう道もありだよなって思ったから、何にも言わなかった。」


「・・・。」


「でもこうなってみるとさ、やっぱり引き留めてあげるべきだったって後悔してる。」


「ありがとうございます。でもそれは・・・自分で決めたことですから。」


そう答えた私に


「瞳、私もお陰様で、契約社員を一人くらい、会社に推薦できる立場になった。リチャレンジプランって言って、スタ-トは契約社員だけど、退職した社員の再雇用システムが今は出来たんだよ。入社後の評価次第で、正社員に昇格できるチャンスももちろんある。どう、やってみる気ない?」


詩織さんは熱っぽく誘ってくれる。


「そうか、リチャシステムがあったんだ。お姉ちゃん、せっかく詩織さんが言って下さってるんだから、チャレンジしてみなよ。」


妹もそう言って、私の顔を見つめる。そんな2人の顔を交互に見て微笑んだ私は


「ありがとうございます。思ってもみなかったお話で、本当に光栄です。でも・・・5年もブランクがあると、システムもだいぶ変わってるでしょうし、正直自信がありません。それに・・・。」


「それに?」


「お世話になるとすれば、この部屋を出なければなりません。ここからだと、毎日の通勤がかなり厳しいですから。ですから・・・せっかくおっしゃっていただいたのに・・・申し訳ありません。」


詩織さんに頭を下げた。