あなたを愛しています

「私は今の家を、学と一緒に過ごしたあの家を引き払うつもりなんてありません。これからもあの家で、学と一緒に・・・学の菩提を弔いながら、暮らしていくつもりです。」


訴えるように言う私に


「その気持ちは嬉しいが・・・。」


困惑ぎみの義父を遮るように


「いい加減現実を見なさい、瞳!」


母が鋭い声を上げた。


「じゃ聞くけど、あのお部屋の家賃はどうするつもりなの?あなたに払えるわけないでしょ?」


「それはもちろん今の私には無理だけど、仕事はちゃんと探します。」


「正社員になると言うのか?」


今度は父が聞いて来る。


「はい。」


「今は新卒の大学生でも就職が厳しい時代だ、そんな簡単な話じゃないぞ。だとしたら、はっきり言って、派遣社員やパートの給料じゃ、あそこに住み続けるのは無理だ。」


「でも・・・。」


「私たちはお金の話だけで、こんなことを言ってるわけじゃないの。学さんが亡くなってから、今日までのあなたを見て、とても1人にはしておけないとみんなが思ってるの。四十九日まではと思っていたから、私も他のみんなもなんとかやり繰りをして、あなたに付いていてあげたけど、いつまでもそうしてはあげられないのよ。」


「・・・。」


「瞳が今回のことでどんなにショックを受け、悲しみのどん底にいるのかはわかってるつもり。いつまでくよくよしててもしょうがないじゃないって言う人もいるかもしれないけど、そんな簡単に割り切れる話じゃないのもわかる。今の瞳には、時間が必要だと思ってる。だからこそ、1度私たちのもとに帰ってらっしゃい。」


母は優しく諭すように言ってくれたけど、私はどうしても頷けない。結局、この日は話は平行線のまま、私は自宅に帰った。母は一緒に付いて来てくれると言ったが、私は断った。父に家まで送ってもらい、ひとり真っ暗な部屋に入った私は、一瞬足がすくんだ。慌てて電気を点け、周囲を見回す。


朝まで遺影と位牌、それにお骨が安置してあった祭壇にはもう何もなく、明日にはその祭壇も葬儀会社が引き取りに来る。そうしたら、また元通りの部屋。たった1つ、学の姿が見えないことを除いては・・・。


「学・・・なんで、なんで・・・私を残して・・・学の嘘つき、バカ・・・。」


結局、私はそのまま泣き崩れてしまった。