こうして私が、駄々っ子のように殻に閉じこもっている間にも、時は確実は過ぎ、気が付けば四十九日の法要の日がやって来た。
この日、私の胸に抱かれ、家を出た学の遺骨は、もうこの家に戻って来ることはない。法要が終われば、西村家の墓に埋葬され、仏様になるからだ。
正直言えば、学の遺骨と離れることは耐え難かったが、さすがにそれを口にすることは憚られた。
法要、そしてお斎と呼ばれる食事会が終わり、私たちは学の実家に立ち寄った。今後のことを相談したいと義両親から申し出があったからだ。
「瞳さん。」
改めて向かい合った義両親は、大袈裟でなく、10歳くらい齢を取ってしまった感じだ。愛する息子に先立たれた喪失感と悲しみは、当たり前だが、私に勝るとも劣らないはずだ。
「はい。」
呼び掛けて来た義父の顔を、真っ直ぐに見た。その私の表情に、義父は一瞬、躊躇ったように言葉を呑んだように見えた。しかし、気を取り直すと
「息子の位牌と遺影のことなんだが・・・申し訳ないが、こちらで預かることにしたいんだよ。」
それはあまりにも意外な言葉だった。当然、それらを守って行くのは、妻である私の役目だと思っていたからだ。
「瞳さんの立場からすれば、なんで?ということになるかもしれん。その気持ちはよくわかるし、ありがたいとも思う。だが・・・。」
ここでまた言葉を切った義父。そんな義父を義母も私の両親も、心配そうに見ていたが、やがて
「その方が瞳さんの為だと思う。」
と言葉を紡いだ。
「どういうことでしょう・・・?」
問い返した私に
「瞳さんはまだ若い。君の人生は、まだまだこれからだ。君たちが、本当に愛し合っていた夫婦であることは、私も妻も君のご両親もよく理解している。だけどね瞳さん、学はもういないんだ。だとしたら、君に残された長い人生を、何のしがらみもなく歩んで行って欲しいんだ。」
義父の言わんとしてることがわかって、私は愕然とする。
「現実的な話をすれば、今の君たちの家も、学がいなくなった今、いつまでも住み続けるわけにもいくまい。そうなれば、瞳さんはいったん実家に戻ることになるのだから、学はこちらで引き取るのが自然だと思う。」
「ちょっと待って下さい。」
私はようやく声を上げられた。
この日、私の胸に抱かれ、家を出た学の遺骨は、もうこの家に戻って来ることはない。法要が終われば、西村家の墓に埋葬され、仏様になるからだ。
正直言えば、学の遺骨と離れることは耐え難かったが、さすがにそれを口にすることは憚られた。
法要、そしてお斎と呼ばれる食事会が終わり、私たちは学の実家に立ち寄った。今後のことを相談したいと義両親から申し出があったからだ。
「瞳さん。」
改めて向かい合った義両親は、大袈裟でなく、10歳くらい齢を取ってしまった感じだ。愛する息子に先立たれた喪失感と悲しみは、当たり前だが、私に勝るとも劣らないはずだ。
「はい。」
呼び掛けて来た義父の顔を、真っ直ぐに見た。その私の表情に、義父は一瞬、躊躇ったように言葉を呑んだように見えた。しかし、気を取り直すと
「息子の位牌と遺影のことなんだが・・・申し訳ないが、こちらで預かることにしたいんだよ。」
それはあまりにも意外な言葉だった。当然、それらを守って行くのは、妻である私の役目だと思っていたからだ。
「瞳さんの立場からすれば、なんで?ということになるかもしれん。その気持ちはよくわかるし、ありがたいとも思う。だが・・・。」
ここでまた言葉を切った義父。そんな義父を義母も私の両親も、心配そうに見ていたが、やがて
「その方が瞳さんの為だと思う。」
と言葉を紡いだ。
「どういうことでしょう・・・?」
問い返した私に
「瞳さんはまだ若い。君の人生は、まだまだこれからだ。君たちが、本当に愛し合っていた夫婦であることは、私も妻も君のご両親もよく理解している。だけどね瞳さん、学はもういないんだ。だとしたら、君に残された長い人生を、何のしがらみもなく歩んで行って欲しいんだ。」
義父の言わんとしてることがわかって、私は愕然とする。
「現実的な話をすれば、今の君たちの家も、学がいなくなった今、いつまでも住み続けるわけにもいくまい。そうなれば、瞳さんはいったん実家に戻ることになるのだから、学はこちらで引き取るのが自然だと思う。」
「ちょっと待って下さい。」
私はようやく声を上げられた。


