あなたを愛しています

それからの時間は、まるで学がいなくなったことを、ダメ押しされるかのように、様々な手続きや雑事が私に降りかかって来た。あいさつ回りと退職手続き、私物引き取りの為に、学の会社に赴いたのを皮切りに、携帯の解約、銀行口座の閉鎖・・・そしてなにより堪えたのが保険金請求の手続きだった。


こんな、いただいて嬉しくないお金はないし、人の命の値段なんて、こんなもんなんだ。そんな気持ちにさせられた。


それでも、こうしてやることがある間はまだよかった。そういったものが一段落し、当面の予定がなくなると、私は引きこもりになった。パートに行っていたコンビニも辞めてしまった。そんな私を心配して、母を初めとした多くの親族、友人が入れ代わり立ち代わり訪ねて来てくれたが、私は何の気力もなく、祭壇の前に座り、学の遺骨の前で、学の遺影を眺め、そして突然訪れる悲しみや寂しさに涙を流す。そんな毎日を過ごしていた。


「瞳、悲しいのも苦しいのもわかるけど、でもそうやって、ずっと嘆き悲しんでいても、泣き叫んでみても、学さんはもう帰って来ないんだよ。」


ある日、堪りかねたように母がそんなことを言って、私を奮い立たせようとしたが


「そんなこと知ってる、わかってるよ!でも、愛する人が、一生を共にするって誓い合った人が、突然いなくなったんだよ。何の前触れもなく、本当に急に。そんなの、受け入れられるわけないでしょ!納得できるわけないじゃない!」


ヒステリックに私は叫ぶ。


「瞳・・・。」


「お母さんに何がわかるの?はっきり言って私、なんの為にこれから生きて行かなきゃいけないのよ?」


私の言葉に、母は愕然とした表情になる。


「学は嘘つきだよ。一緒に幸せになろうって約束したのに、勝手にひとりでいなくなって。私にこれから、ずっとひとりで生きて行けって、酷すぎるよ・・・。」


あふれ出る涙を止める術もないまま、私は言う。その私の顔をじっと見たお母さんは


「瞳、今のあなたを見たら、学さんはきっと悲しむわよ。」


「えっ?」


「あなたは今、生きているの。頑張れという言葉を伝えるのは酷かもしれないけど、残された瞳は、学さんの分まで生きて行く義務がある。それだけは忘れないで。」


私に言い聞かせるような母の言葉は、しかし私には綺麗事にしか聞こえなかった。だから受け入れることが出来ずに、私は左右に首を振るだけだった。