あなたを愛しています

母が片付けの為に台所に立ち、残された私はとりあえずTVを点ける。ワイドショ-が流れて来て、見るとはなしに見ると、夫の事故のことが取り上げられていて、私は固まる。


被害者の妻であるにも関わらず、様々なことに忙殺されて、私は今回の事故のことをほとんど知らずにいた。葬儀の時には、マスコミが取材に現れ、私もマイクを向けられたり、質問を投げかけられたが、応対できる心境になく、親戚や葬儀会社のスタッフにガードされて、私は無言を通した。


私がダメだとわかると、次にタ-ゲットにされたのが義両親だった。「他人の不幸は甘い蜜」という言葉を知らないわけではないが、今の私たちの心境になど、まるで配慮する様子もなく、土足でズカズカと上がりこんで来るような遠慮会釈もない彼らの言動に、私は不快感と不信感を抱かざるを得なかった。


見たくない、とっさにそう思ったが、結局チャンネルを変えることも、TVを消すことも出来ずに、私は結局画面を食い入るように見つめてしまう。


今回の事故で亡くなったのは、夫を含めて4名もいた。また他にケガをされた方も何人もいることを知り、私の胸は痛む。だけど、その胸の痛みが怒りに変わるまで、大した時間は必要なかった。それは事故を起こした犯人が


『人生が嫌になって死のうと思った。だけど、自殺するのは嫌だったので、人を殺せば死刑になれると思って、今回のことを計画した。』


と全く悪びれた様子もなく、自供しているということを聞いたからだ。


「ふざけるな!」


私はTVの画面に向かって叫んでいた。こんな身勝手な人間の愚行の為に、学は、他の3人の被害者は突然命を奪われ、他にも何人もの人が傷付けられた。言いようのない怒りが全身を駆け巡り、次の瞬間、私は立ち上がり、扉に向かって突進していた。


「瞳!」


私の様子がおかしいことに気付いた母が、慌てて止める。


「どうしたの、急に?」


「殺してやる。」


「えっ?」


「そんなに死にたいんなら、私が殺してやる。殺してやる・・・。」


私はうわ言のようにそう繰り返すと、また出口に向かって、進み出そうとする。


「瞳、落ち着きなさい、落ち着いて!」


そんな私の耳を引っ張るように、大声で言う母としばらく、もみ合っていたけど、とうとう私は押さえつけられた。


床に座り込んだ私は、一瞬母と顔を見合わせて、そして自分でも驚くような声で号泣し始めた。


「瞳・・・。」


そんな私の頭を、子供の頃のように母がずっと撫でてくれていた。