あなたを愛しています

そして私たちは2人きりになった。改めて、横たわる彼の顔を覆う白布をめくった私は、そのままそれを完全に取り去った。目を閉じている学の顔には、苦悶の表情はなく、どう見ても普通に眠っているようにしか見えなかった。


「ねぇ・・・。」


私は彼に呼び掛ける。


「ウソ・・・だよね。今朝、ケンカしちゃったから、仕返しに私をちょっとからかってるんだよね・・・。」


その自分の言葉が耳に入って、今まで不思議なくらい、浮かんで来なかった涙がにじんできて、頬を伝り、そして学の顔に落ちて行く。


「なんでそうやって、いつも周りの人を巻き込んで、私にサプライズ仕掛けるの?学の・・・悪いクセだよ。もうわかったからさ・・・そろそろ目を開けてよ・・・。」


私の声が部屋に響く。だけど、学は何も答えてくれないし、身動き1つしない。


「いい加減にしてよ!」


私はついに叫んでしまった。


「今朝はあんなに元気だったよね。いってらっしゃいって見送ってあげなくて、ごめんなさい。私反省してさ、お夕飯いっぱい作ったんだよ。全部、学の大好きなものばかり・・・きっと喜んでくれるはずだからさ・・・そろそろ目を開けてよ。一緒にウチに帰ろうよ・・・。」


必死に私は訴える。


「死んじゃったなんて、ウソでしょ?ねぇ、私たち、もう仲直りもできないの?私、あなたにごめんなさいも言えないの?ねぇ、学、なんとか言ってよ!」


だけど、私の言葉は虚しく部屋に響く、だけ・・・。


「なんでケーキなんか買いに行ったの?私、そんなの頼んでないよ。」


今日は記念日でもなんでもない。なのに、わざわざ学が自宅と反対側の出口にあるケーキ屋に行った理由は、1つしか考えられない。


「ケーキなんかいらない。私は学がちゃんと帰って来てくれれば、他に何にもいらなかったんだよ。なのに、なんで・・・バカだよ、学は・・・。ううん、バカなのは私。あんなつまらないことで、あなたに怒って・・・私のせいなんだよ。私の為に・・・学、ごめんなさい!」


とうとうこらえきれなくなった私は、学の身体に縋りつくと、号泣していた。